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振動 / 1級 · 図解用語集

振動1級の重要用語12選

計算力学技術者試験の振動1級から、図があり具体例で確かめられる用語を12個選びました。各章からまんべんなく選んでいるので、全体像をつかむ入口にも使えます。

用語 1 · 第1章 解析力学

有限要素法(疎な対称行列)

有限要素法(疎な対称行列)を説明する図

有限要素法は、ガラーキン法に『各節点のまわりだけで値をもち、離れた所では零になる局所的な形状関数』を組み合わせた数値解法です。重み=形状関数(ガラーキン法)なので、対称な弾性・慣性問題では係数行列も対称になり、形状関数が局所的なので、行列の非ゼロ成分が一部に限られる『疎(すか)な』行列になります。対称かつ疎という性質のおかげで、節点をたくさん取っても必要な記憶量と計算量を大きく節約でき、複雑な形の構造でも実用的に解けます。これが現在の構造解析・振動解析の標準手法になっている理由です。

具体例

離れた節点の形状関数が重ならない場合、その積の積分は零です。行列の多くが零になるので、非零の成分だけを保存して計算できます。

用語 2 · 第2章 振動工学

剛体モード

剛体モードを説明する図

固有角振動数が $\omega=0$ になるモードを剛体モードといいます。宙に浮いて何にも固定されていない構造(自由系)は、変形せずにそのまま平行移動したり回転したりできます。この『変形しない動き』がちょうど $\omega=0$ のモードで、このとき剛性行列 $[K]$ は逆行列をもたない半正定値になります(変形しないので元に戻そうとするばねの力が零)。宇宙空間に浮いた物体なら、前後・左右・上下の並進3つと、3軸まわりの回転3つで、合わせて6つの剛体モードをもちます。応答を計算するときは、この剛体モードを除いた変形モードだけを重ね合わせます。

具体例

弾性軸でつないだ2枚の円板を宙に浮かせて自由にねじり振動させると、両方が同じ向きに一体で回る $\omega=0$ の剛体モードが1つ現れます。

用語 3 · 第3章 有限要素のテクノロジー

モデルを簡略化する要素(質量要素・剛体要素・集中質量要素)

モデルを簡略化する要素(質量要素・剛体要素・集中質量要素)を説明する図

FEMで全部を細かいメッシュで作ると要素数が増えて計算が重くなります。そこで「ほとんど変形しない硬い部分」は、形を細かく刻まず特徴だけを持つ特別な要素で代表させて軽くします。①質量要素=寸法(形)の情報を持たず、質量や慣性モーメントだけを入力する1点の要素。十分硬くてひずまないパーツを重心位置に置いたこの1点で代表させれば、メッシュを切らずに済み計算時間を短くできます(ただしこの点自体はひずまないので、そこの応力・ひずみは出ません)。②集中質量要素=フライホイールのように大きな慣性を持つ部品を1点にまとめたもの。取り付ける節点は重心にいちばん近い場所を選びます(重心からずれると慣性の効き方が実物と変わる)。③剛体要素=節点どうしを「無限に硬い棒」でつなぎ、つないだ点の相対位置が変わらない(変形しない)とみなす要素で、変形を無視できるほど硬い連結部を少ない自由度で表せます。いずれも「硬くて変形しない所は細かく作らず、質量や連結の役目だけを持たせて軽くする」ための道具です。

具体例

軸の先に付く重いフライホイールは、重心に近い節点へ集中質量要素1点で置き換えると、細かいメッシュなしで1次モードを調べられます。

用語 4 · 第3章 有限要素のテクノロジー

粘弾性モデル(マクスウェル/フォークト)

粘弾性モデル(マクスウェル/フォークト)を説明する図

ゴムのように「弾性(ばねのように形を戻す性質)」と「粘性(ゆっくり流れて抵抗する性質)」を両方もつ材料の表し方です。弾性はばね、粘性はダッシュポット(ピストンがオイルの中を動く筒で、速く動かすほど強く抵抗する部品)で表し、この2つの組み合わせ方で性質が変わります。ばねとダッシュポットを縦に一列につないだのがマクスウェルモデル、横に並べてつないだのがフォークトモデルで、両者を組み合わせた一般化モデルもあります。粘性があるので速度依存が大きく、衝撃のような急な荷重をやわらげたい(緩和させたい)場面で使われます。どのモデルを選ぶかで、力を抜いたあとの戻り方や、ゆっくり荷重したときの硬さの出方が変わります。

具体例

防振ゴムは、ばね(弾性)とダッシュポット(粘性)を並列にしたフォークトモデルで表すのが基本です。

用語 5 · 第4章 結合・境界部のモデリング

偶力とモーメント励振

偶力とモーメント励振を説明する図

平行で作用線が離れた、大きさが同じで向きが反対の1組の力を偶力といいます。少し離れた2点に逆向きの力を与えると、力を合計すると0(全体を押し流す作用はない)なのに、回転させようとする作用(モーメント)だけが残ります。FEMでは、並んだ2つの節点に逆向き・等大の力 $+f_0\cos\omega t$ と $-f_0\cos\omega t$ を与えると、その端は回転方向に揺さぶられる「モーメント励振」を受けます(横にまるごとずらす「せん断励振」ではありません)。回転方向に振動を入れたいときに使う、基本的なテクニックです。合力が0でも回転の作用だけ残るのが偶力のミソで、ドアノブを両指でつまんで回すときのように、逆向きの力の対が回転を生みます。

具体例

節点1に $x$ 方向 $f_0\cos\omega t$、少し離れた節点3に $x$ 方向 $-f_0\cos\omega t$ を与えると、左端がモーメント励振を受けます。

用語 6 · 第4章 結合・境界部のモデリング

ボルト締結の固着範囲モデル化

ボルト締結の固着範囲モデル化を説明する図

2枚の板をボルトで締めた部分は、どれくらいの範囲ががっちりくっついているか(固着範囲)で固有振動数が変わります。これをモデルで表すには、ボルト付近の接触面で、上下両方の板の節点を共有(一体化)させて「くっついている」状態を作ります。そして共有する節点の個数を増やしたり減らしたりすると、固着している範囲=締結の強さを調整できます。個数を増やせば広くがっちり、減らせば狭くゆるく、というイメージです。実際には実験で測った固有振動数にモデルが合うように、共有する節点の数を決めます。ボルト1本でも、周りのどこまでが一緒に動くかで硬さが変わるので、節点数という分かりやすいつまみで合わせ込むわけです。

具体例

実験値に合うまで、ボルト周りで共有する節点の個数を増減して固着範囲を調整します。

用語 7 · 第5章 構造複合系の解析

Guyanの静縮小(静縮小)

Guyanの静縮小(静縮小)を説明する図

大きな機械を有限要素で細かく分けると、節点(計算点)の数が膨大になり、解くのに時間がかかります。そこで、本当に注目したい少数の節点(マスター節点)だけを残し、残り(内部節点)を消して方程式を小さく作り直すのが縮小法で、その最も素朴なものがGuyanの静縮小です。考え方は単純で、消したい内部節点の動きを『マスター節点が静かに動いたときに、ばねのように弾性的につられて動く分』だけで近似します(=力の速い出入りは無視し、静かなつり合いだけで内部を決める)。こうすると未知数はマスター節点だけになり、計算量が大きく減ります。マスター節点には、設計者が扱う力(軸受の力や制御の力)がかかる節点を選んでおくと後の計算で扱いやすくなります。不つり合い力がかかる節点は、必ずしもマスターに選ぶ必要はありません。

具体例

多数の円板を付けた回転軸を細かく分けると自由度が膨大になるので、軸受や制御機構の節点だけをマスターに残し、間の節点を静縮小で消して小さな方程式にします。

用語 8 · 第5章 構造複合系の解析

ジャイロ項(ジャイロモーメント)

ジャイロ項(ジャイロモーメント)を説明する図

傾き振動の式で$\theta_x$と$\theta_y$をつなぐ項$I_p\omega\dot{\theta}_y$と$-I_p\omega\dot{\theta}_x$をジャイロ項といいます。回っているコマが倒れそうで倒れず首を振る(みそすり運動)のと同じで、回転体は軸方向に角運動量$I_p\omega$を持ち、その向きを変えようとすると抵抗するようなモーメント(ジャイロモーメント)が生まれます。これがジャイロ項の正体です。見た目は傾く速さ$\dot{\theta}$に比例するので減衰(エネルギーを食う項)に似ていますが、エネルギーは散逸させず、むしろ復元力(戻そうとする力)の性質を変えます。だから固有振動数が回転数に依存し、前向きと後向きで値が分かれるのです。運動方程式を行列で書くと、この項の係数は転置すると符号が反転する反対称行列になります。回転が止まる($\omega=0$)とこの項は消え、連成もなくなります。

具体例

回るコマを傾けようと押すと、押した向きではなく横へ首を振るように逃げます。この『回転ゆえのねばり』がジャイロ項で、回転が速いほど強く効きます。

用語 9 · 第6章 音響連成系の解析基礎

境界条件(基本・自然/剛壁・開口・インピーダンス)

境界条件(基本・自然/剛壁・開口・インピーダンス)を説明する図

音場の端(境界)で何を指定するかには種類があります。端で音圧$p$の値を与えるもの(=未知関数$\Phi$の値そのものを指定)を基本境界条件、端で粒子速度$v$を与えるもの(=未知関数の微分$d\Phi/dx$を指定)を自然境界条件といいます。有限要素法では、基本境界条件は解に直接代入し、自然境界条件は弱形式の境界項を通じて自然に取り込まれます。物理的な端の代表は三つで、剛壁(硬い壁)は空気が壁を貫けないので法線方向の粒子速度がゼロ($v=0$)、開口(開放端)は外の大気とつながって音圧がほぼゼロに落ち($p=0$)、その中間が音響インピーダンス境界で、端での音圧と粒子速度の比を指定します。吸音材で覆われた壁のように、音の一部を吸って一部を反射する面は、このインピーダンス境界で表します。

具体例

スピーカー面のように速度が決まっている端は自然境界条件($v$指定)、大気に開いた開口端は基本境界条件($p=0$)、吸音壁は複素インピーダンスで反射と吸収の割合をまとめて表します。

用語 10 · 第7章 流体連成系の解析基礎

フラッター(空力自励振動・1自由度/2自由度)

フラッター(空力自励振動・1自由度/2自由度)を説明する図

フラッターは、流れから受ける空気力によって、構造の揺れが時間とともにどんどん大きくなっていく自励・不安定振動です。翼や橋桁、板状の構造物で問題になります。外から周期的に揺さぶられる強制振動とちがい、ある風速をこえると自分自身の運動が空気からエネルギーをもらい続け、小さな乱れが減衰せずに育ってしまう点が特徴です。上下と回転の連成(運動方程式の非対角項)が無視できるほど小さいときは、両者が別々に不安定になる『1自由度フラッター』となり、減衰項の符号を調べるだけで発生を見分けられます。連成が効くときは、上下と回転が結びついて育つ『2自由度フラッター』となり、単純な符号では判定できず、運動方程式の特性根を調べる必要があります。

具体例

橋の桁がある風速をこえると、ねじれと上下のたわみが連動して振幅が発散するのが典型的なフラッターです。

用語 11 · 第8章 振動の数値計算技術

陽解法と陰解法(数値減衰・数値的不安定性)

陽解法と陰解法(数値減衰・数値的不安定性)を説明する図

時間積分には2つの立場があります。陽解法は、次のステップの値を、いままでの分かっている量だけから直接計算できる方法で、連立方程式を解かないので1ステップが軽い。ただし時間刻み $\Delta t$ が大きいと、誤差がねずみ算式にふくらむ数値的不安定性を起こすため、系のいちばん速い振動(最高次の固有値)を目安に $\Delta t$ を小さくとる必要があります(条件付き安定)。陰解法は、次のステップの未知量を含む連立方程式を毎回解く方法で、1ステップは重いけれど、やり方しだいで数値的不安定性が起きず刻みを大きくできます(無条件安定にできる)。なお、積分法やつまみの選び方によっては、本当は減衰がないのに振幅が人工的に少しずつ小さくなる『数値減衰』が現れ、細かい不要な揺れを抑える役にも、着目したい応答を鈍らせる害にもなります。大規模なFEMでは安定性の高い陰解法が使われることが多いです。

具体例

衝突や爆発のような超短時間の現象は陽解法、地震応答のような比較的ゆっくりで大規模な解析は陰解法が向きます。

用語 12 · 第9章 結果の検証と考察

自由度縮約法の精度悪化要因(Guyanの静縮小法・Craig-Bampton法)

自由度縮約法の精度悪化要因(Guyanの静縮小法・Craig-Bampton法)を説明する図

大きなFEMモデルを、代表の自由度(節点)だけ残して小さく『縮約』する2つの方法と、その精度が落ちる原因を見分ける話です。Guyanの静縮小法は、質量の効果(慣性)を無視して、残す主自由度の静的なたわみだけで表す方法で、静かに押したたわみは正しいものの動的なモードは使いません。精度悪化の原因は『分割位置の選び方』と『残す自由度の数』の2つで、動的モードは使わないので『動的モードの抽出数』を原因に挙げるのは誤りです。一方Craig-Bampton法は、主自由度の静的変形(拘束モード)に、主自由度を固定したときの振動モード(動的モード)を足して表すので、より高い周波数まで正しく表せます。こちらの原因は『主自由度の位置』『拘束モードの本数』『縮約した節点の個数』の3つです。結合部を自由にした不拘束モードは使わないので、その抽出数は精度に無関係です。『使っていないモードは原因にならない』という切り分けこそ、縮約モデルの検証の急所です。

具体例

縮約後の応答が合わないとき、Guyanなら分割位置と残留自由度数を、Craig-Bamptonならさらに拘束モードの本数を疑います。使っていない不拘束モードを増やしても直りません。

本ページはsafaによる独立した解説で、アプリ「CAE試験対策」の用語・公式・図を使用しています。日本機械学会による監修・公認を示すものではありません。