固体力学 / 1級 · 図解用語集
固体力学1級の重要用語12選
計算力学技術者試験の固体力学1級から、図があり具体例で確かめられる用語を12個選びました。各章からまんべんなく選んでいるので、全体像をつかむ入口にも使えます。
用語 1 · 第1章 非線形解析における応力とひずみ
客観性と剛体回転不変性(EとA、SとTの違い)

追加の剛体回転Qに対し、今の空間軸の成分で表すT・A・V・DはQを両側に使って変換されます。元の材料方向で測るS・E・Uは変わりません。例えば横へ伸ばした板を90°回すと、空間では縦方向に伸びた状態を表す成分になりますが、元の横方向へどれだけ伸ばしたかは同じです。客観性は成分が常に不変という意味ではなく、観測者が変わっても同じ物理現象を正しく対応付けられる性質です。
具体例
1-6はEとA、1-14はSとTを区別します。向きが変わることと、新たな伸び・応力が生じることを混同しません。
用語 2 · 第1章 非線形解析における応力とひずみ
微小変形理論と有限変形理論(幾何学的非線形)

変形を扱う理論は大きく2つに分かれます。微小変形理論は「変形はごくわずか」と割り切り、力のつり合いを変形前の形のまま考えます(ふつうの線形弾性解析や固有値解析がこれ)。有限変形理論はその割り切りをやめ、力のつり合いを変形後の形で考えます。すると、たとえ材料そのものはまっすぐな線形弾性でも、ひずみが変位に対して曲がった関係(非線形)になり、つり合いの式も非線形になります。この、材料のせいではなく「形が大きく変わること自体」から生まれる非線形性を幾何学的非線形性と呼びます。注意したいのは、回転を含まずにただ平行移動するだけなら、変位がいくら大きくても微小ひずみの問題として扱えること。つまり「変位が大きい=非線形」ではなく、形や向きが大きく変わることが原因なのです。
具体例
薄い板を大きくたわませる、ゴムを引き伸ばす、細長い柱が座屈して曲がる――こうした「形が大きく変わる」問題が有限変形理論の出番です。
用語 3 · 第2章 材料非線形(弾塑性・クリープ・粘弾性)
剛塑性解析と上界・下界定理

剛塑性解析は、塑性ひずみに比べて小さい弾性ひずみを省いて加工中の塑性流動を求めます。除荷の弾性回復や残留応力を求める用途には適しません。関連流れ則・凸な降伏条件の剛完全塑性体を微小変形で扱う上界原理では、速度指定と体積一定を守る候補速度場について、内部の塑性仕事率から外力の仕事率を引く表示の汎関数を最小化します。各項は仕事率(W)で、弾性エネルギーとは別です。指定速度が非零であることなど、問題の境界条件を守ります。比例荷重の崩壊倍率を求める上界法では、基準外力仕事率$W_0>0$に対して$\lambda_{ub}=D/W_0$を候補間で小さくします。下界法は釣合いと降伏条件を守る応力場から下界を求めます。
具体例
鍛造のように弾性ひずみが無視でき比例負荷に近い経路なら、弾塑性解析と剛塑性解析はほぼ同じ結果になります。一方、スプリングバックの解析には弾性を含む弾塑性解析が必要です。
用語 4 · 第3章 幾何学的非線形
幾何学的非線形性とは・変形の分類

変形した向き・形や、その時点で働く応力が、その後の力の伝わり方を変える効果です。張った膜では張力が横方向の抵抗を生み、圧縮された薄板では圧縮応力が横方向の剛性を下げます。形状の変化が目立たなくても、この初期応力の効果が重要なことがあります。初期応力を考慮した微小変位の線形化計算で足りる場合もあり、幾何剛性の考慮を、毎回の大変位非線形反復と同一視しません。真っ直ぐな一本の鉛直ワイヤで真下の物体を静かに吊り、揺れ・横荷重がなく軸ひずみが小さければ、横方向の幾何剛性を使わない軸伸び計算で評価できます。
具体例
薄い板を押すと面内に張力が生まれて、曲げ抵抗に加えた抵抗が現れる場合があります。変形量だけでなく、評価したい現象に応力と形の変化が効くかを確認します。
用語 5 · 第4章 境界非線形(接触)
摩擦発熱

摩擦発熱とは、物体どうしがこすれたとき、摩擦の仕事の一部が熱に変わることです。接触圧力と摩擦係数から単位面積当たりの摩擦力を求め、相対滑り量を掛けて摩擦仕事増分を計算します。さらに熱になる割合を掛けて発生熱を求め、熱伝導解析へ渡します。
具体例
図の順序は「摩擦力×滑り量→摩擦仕事→熱になる割合を掛ける→時間で割る→熱流束」です。$\tau$は単位面積当たりの摩擦力、$\Delta s$は滑り量、$\eta$は熱になる割合、$\Delta t$は時間増分です。$\Delta Q_A$は単位面積当たりの発生熱($\mathrm{J/m^2}$)、$q$は熱流束($\mathrm{W/m^2}$)で、熱量と熱流束を区別します。
用語 6 · 第5章 破壊力学・疲労解析
破壊現象の分類

き裂は初めからある場合と新たに発生する場合があります。疲労・応力腐食割れ・遅れ破壊などで安定成長し、限界に達すると急速な最終破断へ移ることがあります。
具体例
じん性が低い場合はぜい性破壊、高い場合は延性破壊や塑性不安定が最終破断の形態となることがあります。
用語 7 · 第6章 動的解析
アワーグラスと衝突エネルギー

低減積分要素では、積分点でひずみゼロに見える偽の変形モードが生じることがあります。剛体移動とは別のものです。人工的な抗力で抑え、その仕事をアワーグラスエネルギーとして監視します。
具体例
衝突初期は主に運動エネルギーで、変形とともに内部エネルギーへ移ります。人工エネルギーを含めて重複なく収支を確認し、人工成分が大きすぎる場合は精度を見直します。
用語 8 · 第7章 伝熱解析
熱伝導の境界条件(4種類)

境界条件は表面で何を決めるかという約束です。①温度指定は表面温度を決めます。②熱流束指定は出入りする熱を決め、外向きを正とすれば断熱は$q_n=0$です。③熱伝達では表面温度$T$と流体温度$T_f$の差に熱伝達率$h$を掛けます。④ふく射では、相手を既知温度の黒体環境とみなす基本モデルで$q_n=\varepsilon\sigma(T^4-T_r^4)$となり、温度はKです。
具体例
温度を未知数として熱収支を解く面に、独立した温度指定と熱流束指定を重ねて与えません。対流とふく射のように同じ面の複数の放熱機構を合計する場合とは区別します。
用語 9 · 第8章 要素テクノロジー
せん断中心(shear center)

横力を作用させても曲げに伴うねじれを生じない点がせん断中心です。図心は面積分布から決まる点で、二軸対称な断面では一致しますが、溝形では一般に一致しません。せん断中心から距離$e$だけ外れた荷重$P$は、ねじりモーメント$Pe$も与えます。せん断応力が最大の点とは別です。
具体例
コの字断面の背中(ウェブ)の真ん中を指でまっすぐ押しても、断面がくるっとねじれます。ねじらせない点=せん断中心は、断面の外側にあります。
用語 10 · 第9章 数値解析法
サブスペース法

必要なp本のベクトルを列に持つXを更新し、その張る空間へ問題を縮めます。ベクトル同士が同じ方向に重ならないよう直交化し、p×pの小さいCの固有値問題を解きます。その結果をXで元の自由度へ戻して反復します。大行列全体を対角化する方法ではありませんが、小さいCをヤコビ法で解くことはできます。近接・重複固有値を含む場合は、その固有空間を表せる本数を確保します。
具体例
正の固有値を小さい順に並べると、最小固有ベクトルの漸近的な誤差割合は$|\lambda_1/\lambda_{p+1}|$です。pを増やすと収束が改善し得ますが、1回の計算量も増えます。
用語 11 · 第10章 解析の検証
検証(Verification)と妥当性確認(Validation)

検証は、計画した解析を論理的・数値的に正しく実施したかを調べます。入力の確認だけでなく、反力・変形・メッシュや刻みへの依存など、計算結果も対象です。妥当性確認は、そのモデルと結果が意図する工学用途に使えるかを、独立した根拠と照合して確かめます。数値的に収束しただけで、実物への適用まで正しいとはいえません。
具体例
計算がつり合い式を満たすかは検証です。実験・工学式・妥当性確認済みの類似問題との比較は、仮定と適用範囲に気を配って妥当性を調べる根拠になります。
用語 12 · 第11章 各種モデリング技術
連成問題とクラスI・II

複数の物理現象が互いに影響する問題です。クラスIは流体と構造の表面のように領域境界の条件を介して結び付き、クラスIIは圧電体のように領域が重なり、支配方程式や構成式を通じて結び付きます。温度を先に独立に解ける通常の静的線形熱応力は、公式の相互作用する連成問題とは区別し、手順として片方向連成とも呼びます。数式上の消去が可能かどうかだけで物理的な連成を定義しません。
具体例
流体構造連成は接触面という“境界”を介すクラスI、圧電体は同じ材料の中でひずみと電界が結ばれるクラスIIです。
本ページはsafaによる独立した解説で、アプリ「CAE試験対策」の用語・公式・図を使用しています。日本機械学会による監修・公認を示すものではありません。