safa / CAEの学び

熱流体力学 / 1級 · 図解用語集

熱流体力学1級の重要用語12選

計算力学技術者試験の熱流体力学1級から、図があり具体例で確かめられる用語を12個選びました。各章からまんべんなく選んでいるので、全体像をつかむ入口にも使えます。

用語 1 · 第1章 単相流の物理

次元解析(バッキンガムのπ定理)

次元解析(バッキンガムのπ定理)を説明する図
$\phi(\pi_1,\ldots,\pi_{n-r})=0$

異なる単位をもつ量を、単位が打ち消し合う組合せへまとめます。物理量が$n$個、次元行列の独立な列が$r$個なら、独立な無次元数は$n-r$個です。音速では$a^2\rho/K$が無次元となり、$a=C\sqrt{K/\rho}$が得られます。次元解析だけでは係数$C$は決まりません。微小な断熱音波では$C=1$です。

用語 2 · 第9章 混相流の基礎

単一気泡の終端速度を支配する無次元数(Re・We・Eo・Fr)

単一気泡の終端速度を支配する無次元数(Re・We・Eo・Fr)を説明する図
Re=\frac{\rho_L V d}{\mu_L},\ We=\frac{\rho_L V^2 d}{\sigma},\ Eo=\frac{\Delta\rho\,g\,d^2}{\sigma}

静止液体中を上昇する単一気泡の終端速度$V$は、慣性力・粘性力・表面張力・浮力の4つのつり合いで決まります。これらの力の比を表す無次元数が使われます。レイノルズ数$Re=\rho_L V d/\mu_L$は『慣性力/粘性力』、ウェーバー数$We=\rho_L V^2 d/\sigma$は『慣性力/表面張力』、エトベス数$Eo=\Delta\rho\,g\,d^2/\sigma$は『浮力/表面張力』を表します($d$=気泡径、$\sigma$=界面張力、$\Delta\rho$=気液密度差)。フルード数は『慣性力/浮力の平方根』で、正しくは$Fr=V/\sqrt{\Delta\rho\,g\,d/\rho_L}$の形になります(単に$V/\sqrt{\Delta\rho\,g\,d}$と書くのは誤り)。なお気液の密度が既知で一定なら、終端速度を整理するのに必要十分な独立した無次元数は2つで足ります。図: 上昇する球形気泡に働く浮力・抗力(粘性)・表面張力・慣性力と、それらの比で決まる無次元数。

具体例

気泡径$d$が大きくなると$Eo$が増えて気泡が変形しやすくなり、球形→楕円→キャップ形と姿を変えます。力の比を無次元数で捉えると、終端速度の傾向を少ない変数で整理できます(問1-1・1-2)。

用語 3 · 第10章 気泡・液滴・粒子

気泡を整理する無次元数(モルトン数・エトベス数)と形状変化

気泡を整理する無次元数(モルトン数・エトベス数)と形状変化を説明する図
M=\frac{g\,\mu_L^4(\rho_L-\rho_B)}{\rho_L^2\,\sigma^3},\qquad Eo=\frac{g\,d^2(\rho_L-\rho_B)}{\sigma}

界面活性剤の影響を無視できるとき、無限静止液中を一定速度で上昇する単一気泡の『気泡レイノルズ数』$Re_B$は、2つの無次元数だけの関数として整理できます(Graceの線図)。1つは『モルトン数』$M=g\mu_L^4(\rho_L-\rho_B)/(\rho_L^2\sigma^3)$で、流体の物性だけからなり気泡径を含みません。もう1つは『エトベス数』$Eo=g\,d^2(\rho_L-\rho_B)/\sigma$で、浮力と表面張力の比を表し気泡径$d$を含みます。気泡径(エトベス数)が大きくなると、形状は球形→回転楕円形→冠球形(球帽状)の順に変わります。整理に使う無次元数は、粘性の効果を含み、かつ整理対象の$Re_B$自身を含まないことが条件で、ウェーバー数とエトベス数の組(粘性が入らない)などは不適切です。なお液に界面活性剤が混じると、マランゴニ効果で気泡表面が剛体的にふるまい、終端速度は低下・抗力係数は増加します(逆ではありません)。図: Graceの線図上で、同じ$M$なら$Eo$の増加とともに球形→回転楕円形→冠球形へ移る様子。

具体例

同じ液($M$一定)なら、気泡径を大きくすると$Eo$が増え、Grace線図の上で球形→回転楕円形→冠球形の領域へ移ります。界面活性剤が入ると表面が固まり、同じ径でも上昇が遅く(抗力係数が増加)なります(問2-18・2-12)。

用語 4 · 第11章 波と界面

長波と短波・重力波と表面張力波(さざ波)

長波と短波・重力波と表面張力波(さざ波)を説明する図
kh\ll1:\ c\approx\sqrt{gh}\quad kh\gg1:\ c\approx\sqrt{\dfrac{g}{k}+\dfrac{\sigma k}{\rho}},\quad k_m=\sqrt{\dfrac{\rho g}{\sigma}}

水面波は、波長 $\lambda$ が水深 $h$ に比べ十分長いものを『長波』、短いものを『短波』と呼びます。分散関係の $\tanh(kh)$ を近似すると、両者の位相速度がはっきり分かれます。長波($kh\ll1$)では $\tanh(kh)\approx kh$ なので $c\approx\sqrt{gh}$ となり、速さは水深だけで決まり波長によりません(深いほど速い)。短波($kh\gg1$)では $\tanh(kh)\approx1$ なので $c\approx\sqrt{g/k+\sigma k/\rho}$ となり、波長で決まります。短波の位相速度は波数 $k_m=\sqrt{\rho g/\sigma}$ で極小になり、ここを境に2種類に分かれます。波数が小さい側($k<k_m$、波長が長い側)は重力が効く『重力波』で波長が長いほど速く、大きい側($k>k_m$、波長が短い側)は表面張力が効く『表面張力波(さざ波)』で波長が短いほど速くなります。『波長が長いほど速い』が表面張力波では逆転する点が要注意です。図: 長波・短波と、重力波・表面張力波の位相速度が波数で変わる様子。

具体例

水では $k_m\approx366\,\mathrm{m^{-1}}$(波長 約1.7cm)。これより短いさざ波は表面張力で、長い波は重力で速さが決まります。水深4mの長波は $c=\sqrt{gh}\approx6.3\,\mathrm{m/s}$(問11-1)。

用語 5 · 第12章 平均化モデル

分布定数 C₀

分布定数 C₀を説明する図
C_0=\dfrac{\langle\alpha j\rangle}{\langle\alpha\rangle\langle j\rangle}=\dfrac{\langle\langle j\rangle\rangle}{\langle j\rangle}

分布定数 $C_0$ は、ボイド率 $\alpha$ と全体積流束 $j$ の『断面内の分布がどれだけ重なっているか(相関)』を表す無次元量です。管壁ではすべりなしで流速が遅く、流路の中央部で $j$ が大きくなります。気泡が中央部に集中して分布すると、ボイド率の高い所と流束の高い所が重なって相関が強まり、$C_0$ は1より大きくなります(通常の気泡流で $C_0\approx1.2$)。逆に気泡が断面内に均一に分布するとボイド率が断面一定となり、定義式から $C_0=1$ になります。気泡が壁近く(流束の小さい所)に偏るほど $C_0$ は小さくなります。スラグ流では約1.2、環状流では1.0がよく用いられます。『均一分布で $C_0=2.0$』といった誤解に注意します。気泡がどこに偏っているかを1つの数字に押し込めた、実務でよく使うパラメータです。図: 気泡の分布(中央集中・均一・壁寄り)によって分布定数 $C_0$ が変わる様子。

具体例

気泡が中央集中なら $C_0>1$(約1.2)、均一分布なら $C_0=1$、壁寄りなら $C_0<1$。$C_0$ は『どこに気泡が偏っているか』を1つの数字で表します(問12-5・12-6)。

用語 6 · 第13章 界面追跡・捕獲法

界面捕獲法(固定格子・関数φ)

界面捕獲法(固定格子・関数φ)を説明する図

界面捕獲法は、空間に固定した格子の上に界面を表す関数 $\phi$ を導入し、$\phi$ が一定となる場所を界面とみなして、界面の位置とその時間変化をとらえる手法です。代表例はVOF法(体積存在率を変数にとる)、密度関数法、Level Set法(界面からの距離を変数にとる)です。界面の上にマーカー(目印)を置かず、固定格子で $\phi$ を移流させた結果から界面の位置・方向を算出する(=界面再構成)点が特徴で、計算格子の点が界面上にあるとは限りません。長所は、界面のちぎれ・合体などの位相変化を自然に扱えること、短所は、界面が有限の厚みを持ちやすく数値拡散や体積保存の課題が残ることです。界面そのものに要素を置いて追う次の界面追跡法と、『格子は固定したまま関数で表すか、界面に要素を置くか』で対比すると整理できます。図: 固定格子上で関数 $\phi$ の分布から界面の位置を切り出す様子。

具体例

水面のような気液界面を、各セルの体積率 $F$(0〜1)でとらえ、$F=0.5$ 付近を界面とみなします。格子は動かさず、$F$ の分布の移流だけで界面の運動を表します(問13-1・13-2)。

用語 7 · 第14章 粒子追跡モデル

回転場中の粒子軌跡(ストークス数と密度比)

回転場中の粒子軌跡(ストークス数と密度比)を説明する図
St=\dfrac{\Omega a^2(2\rho_p+\rho_f)}{9\mu},\qquad \beta=\dfrac{\rho_p}{\rho_f}

一定の角速度$\Omega$で回転している液体の中にある球形粒子の軌跡は、ストークス数$St$と密度比$\beta=\rho_p/\rho_f$の二つで決まります。$St$は定常抗力に対する慣性力の大きさを表し、$St$が小さいほど粒子は周囲の回転運動に追従しやすくなります。$St\ll1$の粒子は静止から出発してもすぐ回転流に乗りますが、$St\gg1$の粒子は慣性のためはじめは渦の中心へ向かいます。十分に時間がたつと、こんどは密度比の効果で軌跡が分かれ、重い粒子($\beta>1$)は遠心効果で渦の中心から離れる向きへ、軽い粒子($\beta<1$、気泡など)は渦の中心へ集まる向きへ移動します。つまり$St$が追従のしやすさを、$\beta$が最終的な集まり方(中心へ向かうか外へ向かうか)を支配する、と押さえるのが要点です。図: 回転場で$St$と密度比$\beta$に応じて渦の中心へ集まるか外へ離れるかが分かれる軌跡。

具体例

$St\ll1$で$\beta<1$(気泡)なら渦の中心へ集まり、$\beta>1$(重い粒子)なら中心から離れます。$St\gg1$では慣性ではじめ中心へ向かい、その後密度比に応じて分かれます(問14-17)。

用語 8 · 第15章 相変化

沸騰とキャビテーション(液体の張力)

沸騰とキャビテーション(液体の張力)を説明する図

沸騰とキャビテーションは、どちらも液体から蒸気への相変化ですが、きっかけが裏返しの関係にあります。沸騰は、液体の局所的な温度が飽和温度を十分に上回ることで起こる相変化で、ふつうは伝熱面のキャビティ(微小なくぼみ)にある蒸気泡が成長することで始まります。いっぽうキャビテーションは、液体の圧力が飽和蒸気圧を十分に下回ることで起こる相変化です。ここで大切なのが液体の性質です。気体の圧力は負になりませんが、液体は分子どうしの引力のために引っ張られて『張力(負圧)』の状態にもなり得ます。このため静圧が飽和蒸気圧より低くなると、微細な核を中心にキャビテーションが始まります。『液体の圧力は原理的に負にならない』と考えるのは誤りで、この張力こそがキャビテーションを理解する鍵になります。沸騰は温度を上げて、キャビテーションは圧力を下げて、同じ飽和の境を反対側から越えて蒸気が生まれる現象だと整理すると分かりやすいです。図: 温度を上げて起こる沸騰と、圧力を下げて起こるキャビテーションの対比。

具体例

ポンプの吸込み側で圧力が下がりすぎると、水が飽和蒸気圧を下回ってキャビテーションが起こります。やかんの底のくぼみから気泡が育つのが沸騰です(問15-2)。

用語 9 · 第16章 結果の検証と妥当性確認

Verification(検証)

Verification(検証)を説明する図

Verification(検証)は、『方程式を正しく解いているか(solving the equations right)』を確かめる、数学の問題です。具体的には、解くべき支配方程式の解と、それを離散化して計算した数値解とが一致しているかどうかを確認します。言いかえると、コードの開発時にモデル化や離散化などで入り込む誤差を見つけ出し、その大きさを定量的に押さえる作業です。ここでは実験は使いません。かわりに、解析解(厳密解)が分かっている問題や、高精度の参照解、そして格子を細かくしたときに解がどう収束するか(格子収束の調べ方、GCIなど)を使って判定します。検証ガイドライン(AIAA G-077-1998など)でもこの位置づけが共通で、ISO9000が定めるソフトウェア品質保証の概念とは別物なので混同しないようにします。次のValidationと役割が異なり、両者は補い合う関係にあります。図: 支配方程式の解と離散化した数値解の一致を確かめる様子。

具体例

厳密解が分かっている問題(たとえば静止気泡のラプラス圧$\Delta p=2\sigma/R$)を解き、数値解が理論値に収束するか、格子を細かくして離散化誤差が想定した次数で減るかを調べます(問16-1)。

用語 10 · 第17章 燃焼の基礎1

輸送物性係数(熱拡散率・物質拡散係数・動粘性係数)

輸送物性係数(熱拡散率・物質拡散係数・動粘性係数)を説明する図

燃焼流では「熱の拡散のしやすさ$=$熱拡散率$\alpha=\lambda/(\rho C_p)$」「物質の拡散のしやすさ$=$物質拡散係数$D$」「運動量の拡散のしやすさ$=$動粘性係数$\nu=\mu/\rho$」の3つをまとめて輸送物性係数と呼びます。$\lambda$は熱伝導率、$C_p$は定圧比熱、$\rho$は密度、$\mu$は粘性係数です。いちばんの要点は、この3つがいずれも同じ単位$\mathrm{m^2/s}$を持つことです。それぞれ「何が」拡散するかは違っても、拡散の速さを表す量としては同じ土俵に乗っているわけです。単位がそろっているからこそ、2つの比をとれば無次元数になり、プラントル数$\Pr=\nu/\alpha$・シュミット数$Sc=\nu/D$・ルイス数$Le=\alpha/D$として、熱・物質・運動量の拡散の速さを互いに比較できます。燃焼の混合や火炎の挙動を整理する出発点です。図: 熱・物質・運動量の3つの拡散がすべて同じ単位$\mathrm{m^2/s}$で測られる様子。

具体例

$\alpha\cdot D\cdot\nu$はすべて$[\mathrm{m^2/s}]$。だから$\Pr=\nu/\alpha,\;Sc=\nu/D,\;Le=\alpha/D$はいずれも無次元になります(問1-4)。

用語 11 · 第19章 燃焼反応

詳細化学反応機構と素反応

詳細化学反応機構と素反応を説明する図

燃料が燃えるとき、実際には分子レベルで多数の反応が同時進行しています。その一つ一つ、実際に一段階で起きている反応を素反応といい、これらを網羅的に集めたものが詳細化学反応機構です。最も簡単な水素でも数十、炭化水素のメタンになると数百もの素反応から構成されます(有名なGRI-Mech3.0は素反応数325)。燃焼を忠実に再現できる反面、反応が多いうえ、中には反応特性時間が極端に短い(とても速く進む)素反応が混じります。非定常の数値解析では、この最も速い素反応に合わせて時間刻み幅を細かく取らざるを得ず、これが計算負荷を大きく押し上げます。そのため、簡略化学反応機構を使う解析より計算負荷が飛躍的に高くなり、解析対象に適した機構を選ぶ必要があります。メタン・空気燃焼の素反応数を「最大10程度」とするのは誤りで、実際は数百です。図: 多数の素反応からなる詳細化学反応機構の全体像。

具体例

メタン・空気燃焼の素反応数は数百(GRI-Mech3.0で325)で、「最大10程度」は誤り。反応特性時間の短い素反応が時間刻み幅を決めます(問3-1)。

用語 12 · 第21章 層流拡散火炎

層流拡散火炎

層流拡散火炎を説明する図

燃料と酸化剤があらかじめ混ざっておらず、火炎面のところで拡散によって初めて出会いながら燃える火炎です。予混合火炎と違って、燃料と酸化剤がそれぞれ反対側から火炎面へ運ばれてくるため、反応は薄い火炎面に集中し、そこで燃料も酸化剤もほぼ使い尽くされてゼロになります。混ぜる手間がないぶん装置が単純で逆火の心配もなく、安全で安定しているのが長所ですが、混合に時間がかかるため予混合火炎ほど速くは燃えません。火炎面の位置は、燃料と酸化剤の拡散がちょうど量論比で釣り合う場所に決まります。層流域では流れの乱れが小さいので、火炎面はなめらかに立ち、理論的な扱いもしやすくなります。ろうそくやガス灯のように、身近な炎の多くがこの層流拡散火炎です。拡散火炎では、燃える速さそのものよりも、燃料と酸化剤がどれだけ速く混ざり合えるか(拡散の速さ)が火炎のふるまいを決めるのが大きな特徴です。図: 燃料側と酸化剤側の中間に薄い火炎面が立ち、両者が拡散で出会って燃える様子。

具体例

ろうそくの炎や、都市ガスを空気と混ぜずにそのまま燃やす拡散バーナーの炎が典型例です(問5-1)。

本ページはsafaによる独立した解説で、アプリ「CAE試験対策」の用語・公式・図を使用しています。日本機械学会による監修・公認を示すものではありません。