固体力学 / 1級 · 図解公式集
固体力学1級の重要公式12選
計算力学技術者試験の固体力学1級から、図があり具体例で確かめられる公式を12個選びました。各章からまんべんなく選んでいるので、全体像をつかむ入口にも使えます。
公式 1 · 第1章 非線形解析における応力とひずみ
変形勾配テンソル

有限変形のすべてを記述する出発点です。変形前のある点の位置を$\mathbf{X}$、変形後を$\mathbf{x}$とし、その点のまわりの小さな矢印$\mathbf{dX}$が変形後に$\mathbf{dx}$へどう化けるかを表すのが変形勾配テンソル$\mathbf{F}$で、$\mathbf{dx}=\mathbf{F}\,\mathbf{dX}$と書きます。成分は変形後の座標を変形前の座標で微分した$\partial x_i/\partial X_j$。変位$\mathbf{u}=\mathbf{x}-\mathbf{X}$を使えば$\mathbf{F}=\mathbf{I}+\partial\mathbf{u}/\partial\mathbf{X}$とも表せます。この$\mathbf{F}$一つに、伸び・縮み・ずれ(せん断)・回転がぜんぶ混ざって入っているのがポイントで、一般には左右対称な行列(対称テンソル)にはなりません。だからこの後、$\mathbf{F}$から「回転」と「純粋な伸び縮み」を切り分ける作業が必要になります。
具体例
せん断変形$x_1=X_1+0.5X_2,\ x_2=X_2$なら$\mathbf{F}=\begin{bmatrix}1&0.5\\0&1\end{bmatrix}$。まったく変形しなければ$\mathbf{F}=\mathbf{I}$(単位テンソル)です。
公式 2 · 第1章 非線形解析における応力とひずみ
グリーン・ラグランジュひずみ

変形前の形(基準配置)を物差しにして測る、有限変形の代表的なひずみです。小さな線の長さが変形でどれだけ変わったかを素直に表すように$(dl)^2-(dl_0)^2=2\,\mathbf{dX}\cdot\mathbf{E}\cdot\mathbf{dX}$と定義され、$\mathbf{E}=\tfrac12(\mathbf{C}-\mathbf{I})$と書けます。成分には$\tfrac12(\partial u_i/\partial X_j+\partial u_j/\partial X_i+\partial u_k/\partial X_i\,\partial u_k/\partial X_j)$のように、ふつうの微小ひずみにはない「2つの傾きの掛け算の項」が付きます。この2次の項こそが幾何学的非線形性の正体です。うれしい性質は、ただ回転しただけ($\mathbf{F}=\mathbf{R}$)ならきちんと$\mathbf{E}=\mathbf{0}$になること。向きを変えただけで「伸びた」と誤解しないので、大回転を含む解析で安心して使えます。
具体例
初期長$L$が現長$l$になると$\mathbf{F}=l/L$で$E=\tfrac12\{(l/L)^2-1\}$。$l/L$が1に近い小変形では$E\approx(l-L)/L$となり、いつもの工学ひずみに一致します。
公式 3 · 第2章 材料非線形(弾塑性・クリープ・粘弾性)
全ひずみの弾性・塑性分解

全ひずみは、除荷で戻る弾性分と、除荷後も残る塑性分の和です。微小ひずみの1次元モデルでは$\varepsilon=\sigma/E+\varepsilon^p$なので、負荷点の全ひずみから$\sigma/E$を引けば塑性ひずみが求まります。降伏後の負荷曲線の傾きと、弾性除荷の傾き$E$は区別します。図の除荷線を横軸までたどった位置が、応力0で残る塑性ひずみです。
具体例
$E=200\,\mathrm{GPa}$、全ひずみ1.2%、応力360MPaなら、弾性分は$360/200000=0.18\%$、塑性分は$1.2-0.18=1.02\%$です。
公式 4 · 第3章 幾何学的非線形
大変位/回転・微小ひずみ問題(極分解 $\mathbf{F}=\mathbf{R}\,\mathbf{U}$)

変形勾配$\mathbf F$を、回転$\mathbf R$と伸び縮み$\mathbf U$に分けるのが極分解です。$\mathbf U\approx\mathbf I$でも$\mathbf R$は大きく変化できるため、大きくしなる薄い定規やはりを、大変位・大回転・微小ひずみとして扱えます。先端のたわみを長さで割った値を、そのまま繊維の伸びひずみとはしません。微小ひずみ用の材料則を使う場合も、回転の扱いと応力・ひずみの配置をそろえます。数%以下なら全材料・全問題で安全という一律の境界はありません。
具体例
厚さ0.4mmの定規を半径100mmで曲げると、表面ひずみの目安は$h/(2r)=0.002=0.2\%$です。大きな回転と小さなひずみが両立します。
公式 5 · 第4章 境界非線形(接触)
ギャップ関数

ギャップは面の間を法線方向に測った符号付き距離です。$\mathbf x_1$は自分側の面、$\mathbf x_2$は相手面の対応点、$\mathbf n_1$は自分側から外へ向く単位法線です。$g>0$は離間、$g=0$は接触、$g<0$は貫通です。
具体例
すきま0.2mmなら$g=0.2\,\mathrm{mm}$です。4-5の左向き正の変位では$g=u_2-u_3$であり、変位の差の順番は定義した向きによります。
公式 6 · 第5章 破壊力学・疲労解析
応力拡大係数と応力特異性

$r$はき裂先端からの距離、$\theta$は向きです。線形弾性の先端応力は$1/\sqrt r$という決まった増え方をし、その強さを$K$で表します。先端応力そのものは理論上無限大なので、FEMの最大応力だけで判断しません。
具体例
$K$の単位は$\mathrm{MPa}\sqrt{\mathrm m}$など、応力×長さの平方根です。無次元の応力集中係数とは別の量です。
公式 7 · 第6章 動的解析
運動方程式

質量×加速度、減衰×速度、剛性×変位を足して外力につり合わせます。変位は位置の変化、速度はその変化の速さ、加速度は速度の変化の速さです。各項の単位は力です。
具体例
外力なしなら右辺はゼロ、減衰なしなら速度の項も消えます。
公式 8 · 第7章 伝熱解析
3次元非定常熱伝導方程式

小さな体積について「入る熱−出る熱+内部で発生する熱=温度を上げるために蓄える熱」と収支を立てます。密度$\rho$と比熱$c$の積に温度の時間変化を掛けた左辺が蓄熱の速さです。均質・等方で熱伝導率$\lambda$一定のとき、右辺の$\lambda\nabla^2T$が伝導による正味の流入、$\dot Q$が単位体積・単位時間の内部発熱です。$\nabla^2T$は$x,y,z$方向の温度の二階微分を足したものです。
具体例
非定常解析には初期温度と境界条件が必要です。一定の端面温度を与えた棒など、安定な定常解へ近づく条件では、長時間後に$\partial T/\partial t=0$となります。
公式 9 · 第8章 要素テクノロジー
ベルヌーイ・オイラーのはり理論

はりの最も古典的な理論です。中立軸(曲げても伸び縮みしない中心線)に垂直な断面は、曲げた後も平らなまま、しかも中立軸に垂直なままだと仮定します。断面が曲がった中心線との直角を保つので『せん断変形』(断面が平行四辺形のようにずれる変形)は生じず、曲げ変形だけを表します。これは、はりの背(せい=高さ)が長さに比べてずっと小さい細長いはりでよく成り立ちます。断面上の高さ$z$の点の軸方向変位は、たわみ$w_0$の傾き$\partial w_0/\partial x$を使って$u=-z\,\partial w_0/\partial x$と表せます。背が高くなるとせん断変形を無視できなくなり、この理論はたわみを実際より小さめ(硬め)に見積もってしまうのが弱点です。板理論ではキルヒホッフ板がこれに対応します。
具体例
細長い物差しを曲げるイメージ。断面はいつも曲がった中心線に垂直を保ち、ずれ(せん断)は考えません。背の高いはりには向きません。
公式 10 · 第9章 数値解析法
べき乗法・逆べき乗法と収束率

実対称正定行列の固有値を$0<\lambda_1<\cdots<\lambda_n$とします。べき乗法はAを掛けて最大固有値の方向へ、逆べき乗法は$Ay=x$を解く操作で最小固有値の方向へ近づけます。逆行列を明示的に作る必要はありません。狙う成分を含む初期値が必要です。誤差に残る割合qは、べき乗法で$|\lambda_{n-1}/\lambda_n|$、逆べき乗法で$|\lambda_1/\lambda_2|$です。
具体例
固有値が2と4なら逆べき乗の誤差割合は1/2です。2と2.1なら約0.95となり、近い固有値ほど誤差が減りにくくなります。
公式 11 · 第10章 解析の検証
極限解析と崩壊荷重(円板の例)

加工硬化を無視した材料で、構造が支えられる限界荷重を求めます。円板の式は外周固定・微小変形の薄肉シェル理論による近似です。$S_y$は降伏点、tは厚さ、aは半径、$M_0$は単位長さ当たりの全塑性モーメントです。応力をMPa、長さをmmでそろえると$M_0$はN、圧力はMPaになります。FEMでは弾完全塑性体も使用でき、刻みや収束条件を確認しながら、変位急増と限界圧力を調べます。計算停止だけで崩壊と断定しません。
具体例
独自例$t=24\,\mathrm{mm}$、$a=240\,\mathrm{mm}$、$S_y=240\,\mathrm{MPa}$なら$M_0=34560\,\mathrm{N}$、$p_c=7.488\,\mathrm{MPa}$です。ソリッドFEMとの比較では塑性域の広がりやヒンジ位置など、モデルの仮定の違いも調べます。
公式 12 · 第11章 各種モデリング技術
動的粘弾性(貯蔵弾性率・損失弾性率)とペイン効果

ひずみ$\varepsilon=\varepsilon_0\sin\omega t$に対して$\sigma=\sigma_0\sin(\omega t+\delta)$なら、正のδで応力はひずみより先行します。同位相のsin成分の係数が貯蔵弾性率、90度ずれたcos成分の係数が損失弾性率です。複素弾性率は$E^*=E\prime+iE\prime\prime$で、その大きさが$|E^*|=\sqrt{(E\prime)^2+(E\prime\prime)^2}$です。複素数そのものと大きさを区別します。ペイン効果は振幅を大きくしたときの貯蔵弾性率の低下です。大振幅で高調波が現れる場合には、基本周波数成分から評価します。
具体例
$\sigma_0/\varepsilon_0=150$MPa、$\delta=30^\circ$ なら $E'\approx130$MPa、$E''=75$MPa、$\tan\delta=0.58$。大振幅で使うとこの $E'$ が下がるのがペイン効果です。
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