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振動 / 1級 · 図解公式集

振動1級の重要公式12選

計算力学技術者試験の振動1級から、図があり具体例で確かめられる公式を12個選びました。各章からまんべんなく選んでいるので、全体像をつかむ入口にも使えます。

公式 1 · 第1章 解析力学

仮想仕事の原理・仮想変位

仮想仕事の原理・仮想変位を説明する図
$\delta W=(F-ma)\cdot\delta r=0$

仮想変位 $\delta r$ とは、レールや糸などの拘束(制限)を破らない範囲で『もし少しだけ動かしたら』と頭の中で考える、ごくわずかな移動のことです。なめらかな拘束では、拘束が物を押す力(拘束力)は動ける向きと直角になるので、その向きへわずかに動かしても仕事をしません(仕事=力×動いた距離で、直角だと零)。この性質を使うと、ダランベールの原理 $F+S-ma=0$ から未知の拘束力 $S$ が消え、$\delta W=(F-ma)\cdot\delta r=0$ という式になります。これが仮想仕事の原理で、計算しにくい拘束力を式から追い出せるのが利点です。

具体例

曲がった針金に通したビーズでは、針金がビーズを押す力はレール方向と直角なので、レールに沿って少し動かしても仕事をせず、式から消えます。

公式 2 · 第1章 解析力学

ラグランジアンとラグランジュの運動方程式

ラグランジアンとラグランジュの運動方程式を説明する図
$L=T-U,\quad \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial \dot q_r}\right)-\dfrac{\partial L}{\partial q_r}=0$

ラグランジアン $L$ は、運動エネルギー $T$ から位置エネルギー(ポテンシャル)$U$ を引いた量 $L=T-U$ です。『足し算($T+U$=全エネルギー)ではなく引き算』であることが大事なポイント。このエネルギーの差 $L$ を使うと、一般化座標 $q_r$ ごとに1本ずつ、$\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial \dot q_r}\right)-\dfrac{\partial L}{\partial q_r}=0$ という運動方程式が立ちます(第2項の符号はマイナス)。力を図で分解しなくても、エネルギーを微分するだけで運動方程式が出てくるのが強みで、途中で扱いにくい拘束力が自動的に消えます。方程式の本数は自由度の数と同じで、台車と振り子のように連なった多自由度系でも機械的に立てられます。

具体例

ばね質量系では $T=\tfrac12 m\dot x^2$、$U=\tfrac12 kx^2$ なので $L=\tfrac12 m\dot x^2-\tfrac12 kx^2$。これを公式に入れると $m\ddot x+kx=0$ が得られます。

公式 3 · 第2章 振動工学

臨界減衰係数・減衰比・減衰固有角振動数

臨界減衰係数・減衰比・減衰固有角振動数を説明する図
$c_c=2\sqrt{mk},\quad \zeta=\dfrac{c}{c_c},\quad \omega_d=\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}$

ばね・質量・ダンパー(減衰)からなる1自由度系 $m\ddot x+c\dot x+kx=0$ に $x=Xe^{\lambda t}$ を入れると、特性方程式 $m\lambda^2+c\lambda+k=0$ が出ます。その解の根号 $\sqrt{c^2-4mk}$ がちょうど零になる減衰が臨界減衰係数 $c_c=2\sqrt{mk}$ で、『行き過ぎて揺れ戻る』か『揺れずにスーッと止まる』かの境目です。実際の減衰 $c$ をこの $c_c$ で割った比が減衰比 $\zeta$ で、振動のしやすさを表す最重要の指標です。$\omega_n=\sqrt{k/m}$ は減衰がないときの固有角振動数、$\sigma=\zeta\omega_n$ は振幅が小さくなっていく速さ(減衰率)、$\omega_d=\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}$ は実際に揺れる角振動数で、減衰があるぶん無減衰よりほんの少しゆっくりになります。 減衰固有角振動数の式を用いるのは不足減衰 $0\le\zeta<1$ の範囲です。

具体例

ドアがバタンと戻らずスッと閉まるドアクローザは臨界減衰付近の調整。$\zeta=0.05$ なら $\omega_d\approx0.9987\omega_n$ で、揺れの速さは無減衰とほぼ同じです。

公式 4 · 第2章 振動工学

応答倍率・共振と最大応答倍率(Q値)

応答倍率・共振と最大応答倍率(Q値)を説明する図
$M_d=\dfrac{1}{\sqrt{(1-r^2)^2+(2\zeta r)^2}}$、$r=\omega/\omega_n$ $M_{d,\max}=\dfrac{1}{2\zeta\sqrt{1-\zeta^2}}$ $Q\approx\dfrac{1}{2\zeta}$

外力 $F\sin\omega t$ を受ける減衰1自由度系で、同じ大きさの力をゆっくり静かに加えたときの変位 $X_{st}=F/k$ に対し、実際の揺れの振幅が何倍にふくらむかを表すのが応答倍率 $M_d$ です。$\omega/\omega_n$(加振振動数と固有振動数の比)が1に近づく、つまり揺らす調子が固有振動数に合うと、分母が小さくなって $M_d$ が跳ね上がります。これが共振です。厳密には倍率が最大になるのは $\omega=\omega_n$ ちょうどより少し低い $\omega=\omega_n\sqrt{1-2\zeta^2}$ で、そのときの最大倍率は $M_{d,\max}=\dfrac{1}{2\zeta\sqrt{1-\zeta^2}}$。減衰 $\zeta$ が小さいほどピークは鋭く高く、危険になります。減衰が小さいときの共振倍率を簡単に表したのがQ値 $Q\approx1/(2\zeta)$ で、Q値が大きい=減衰が小さい=共振が鋭い、という危険度の目安になります。 振動数零以外にピークをもつ最大応答の式は $0<\zeta<1/\sqrt2$ で用います。

具体例

ブランコは固有の周期に合わせて押すと、小さな力でもどんどん大きく揺れます。$\zeta=0.05$ なら最大倍率 $M_{d,\max}\approx1/(2\times0.05)=10$ で、静的変位の約10倍にふくらみます。

公式 5 · 第3章 有限要素のテクノロジー

レイリー減衰と減衰比

レイリー減衰と減衰比を説明する図
$[C]=\alpha[M]+\beta[K]$

多自由度のFEMで減衰をどう与えるか悩ましいとき、よく使う便利な近似がレイリー減衰です。減衰の行列 $[C]$ を、質量行列 $[M]$ と剛性行列 $[K]$ の足し合わせ $[C]=\alpha[M]+\beta[K]$ で作ります($\alpha,\beta$=定数)。$[M]$ と $[K]$ に比例させておくと、減衰がないときのモード(振動の形)がそのまま使え、固有値解析で実数のモードが得られて、モードごとに1自由度系として独立に扱えるのが利点です。1自由度でみた減衰比は $\zeta=\dfrac{\alpha}{2\omega_n}+\dfrac{\beta\omega_n}{2}$($\omega_n=\sqrt{k/m}$=無減衰固有角振動数)。第1項($\alpha$)は振動数が高いほど小さくなるので低い振動数の減衰を、第2項($\beta$)は高いほど大きくなるので高い振動数の減衰を主に担います。だから低次と高次の2つの減衰比を指定すれば $\alpha,\beta$ が一つに決まります。実在の減衰を厳密に表すものではありませんが、扱いやすい近似として広く使われます。

具体例

2つの振動数で減衰比を指定すると $\alpha,\beta$ が決まり、$\alpha$ は低振動数側、$\beta$ は高振動数側の減衰を主に効かせます。

公式 6 · 第3章 有限要素のテクノロジー

幾何剛性(初期応力剛性)と軸力付きはり

幾何剛性(初期応力剛性)と軸力付きはりを説明する図
$\rho A\dfrac{\partial^2 w}{\partial t^2}+EI\dfrac{\partial^4 w}{\partial x^4}-P\dfrac{\partial^2 w}{\partial x^2}=0$

弦やはり、膜・板に、軸方向や面内の張力(引張)がかかると、それと垂直な向きのたわみに対する硬さ(剛性)が増えます。これが幾何剛性(初期応力剛性)です。ギターの弦を強く張るほど高い音(高い固有振動数)になるのがまさにこれ。逆に圧縮だと柔らかくなって固有振動数は下がり、座屈に近づくと横の剛性は0へ向かいます。軸力 $P$(引張を正)を受けるはりの横振動は $\rho A\dfrac{\partial^2 w}{\partial t^2}+EI\dfrac{\partial^4 w}{\partial x^4}-P\dfrac{\partial^2 w}{\partial x^2}=0$ で表され($\rho A$=単位長さあたり質量、$EI$=曲げ剛性)、第3項の $-P\,\partial^2 w/\partial x^2$ が軸力の効果で、幾何剛性として剛性に足されます。解析の手順は、まず軸方向・面内の応力解析をして初期応力を求め、それを幾何剛性として取り込んでから横方向の振動解析を行う、という2段構えになります。

具体例

引張軸力を受けるはりは固有振動数が上がり、圧縮軸力では下がって、座屈直前には0に近づきます(弦を強く張ると音が高くなるのと同じ)。

公式 7 · 第4章 結合・境界部のモデリング

多点拘束(MPC)と力の分配(転置)

多点拘束(MPC)と力の分配(転置)を説明する図
$\{F_a\;F_b\;F_c\;F_d\}^{T}=\{\alpha\;\beta\;\gamma\;\delta\}^{T}F_A$

メッシュの切り方が違う2つの部品をつなぐと、つなぎ目の節点の座標がぴったり一致しないことがあります。そんなとき、ある節点Aの変位を、相手側の複数の節点 $a\sim d$ の変位の重み付き和 $u_A=\alpha u_a+\beta u_b+\gamma u_c+\delta u_d$ で結び付ける拘束が多点拘束(MPC)です。ではAにかかる力は相手側へどう分配されるのか。変位に仮の小さな変化を与えたとき、入力側と伝達先の仮想仕事(力×仮想変位)を等しくする条件を使います。この条件から、力の分配は自動的に決まり、変位の係数をそのまま並べ替えた(転置した)形 $\{F_a\;F_b\;F_c\;F_d\}^{T}=\{\alpha\;\beta\;\gamma\;\delta\}^{T}F_A$ になります。つまり変位の関係式さえ決めれば、力の分配則はその転置として一つに定まるのです。

具体例

スポット溶接やボルトで結んだ2枚の板の、座標が一致しない接合点をMPCで結ぶと、力はその変位係数の転置で各節点へ分配されます。

公式 8 · 第5章 構造複合系の解析

振れ回り運動の運動方程式と自動調心性

振れ回り運動の運動方程式と自動調心性を説明する図
$m\ddot{x}+kx=me\omega^2\cos\omega t$、$m\ddot{y}+ky=me\omega^2\sin\omega t$

図心 $M$ は形の中心、重心 $G$ は質量の中心で、両者のずれを $e$ とします。減衰を省略した等方軸の同期ふれまわりでは、図心の符号付き振幅は $X=e r^2/(1-r^2)$、$r=\omega/\omega_n$ です。$r<1$ では図心は偏心と同方向へ動き、$r>1$ では位相が反転して $X<0$ となります。重心の位置の振幅は $X+e=e/(1-r^2)$ です。したがって十分高速なら $X\to-e$、$X+e\to0$ となり、重心は静止時の軸心 $O$ に近づきます。これが自動調心性です。図心のふれまわり半径まで0になるわけではありません。

具体例

$r=2$、$e=0.30\,\mathrm{mm}$ なら $X=-4e/3=-0.40\,\mathrm{mm}$、$X+e=-0.10\,\mathrm{mm}$ です。図心半径は0.40mm、重心半径は0.10mmです。

公式 9 · 第6章 音響連成系の解析基礎

1次元平面波の基礎2式(連続の式・運動方程式)

1次元平面波の基礎2式(連続の式・運動方程式)を説明する図
$\dfrac{\partial v}{\partial x}=-\dfrac{1}{K}\dfrac{\partial p}{\partial t}$、$\rho\dfrac{\partial v}{\partial t}=-\dfrac{\partial p}{\partial x}$

細い管の中をまっすぐ進む音(平面波)を表すのに必要な二つの式です。一つめは連続の式で、空気が縮んだり膨らんだりする量のつり合いを表し、粒子速度$v$の場所による変化と、音圧$p$の時間変化を結びます(圧力が上がる場所にはまわりから空気が流れ込む)。二つめは運動方程式で、ニュートンの『力=質量×加速度』を空気にあてはめたもので、音圧の坂(場所による変化)が空気を加速します($p$=音圧、$v$=空気の粒子速度、$K$=体積弾性率=縮みにくさ、$\rho$=密度)。未知数が$p$と$v$の二つで、式も二つあるので、組み合わせて解けます。

具体例

連続の式は『圧力が上がる=まわりから流れ込む』、運動方程式は『圧力の坂を下る向きに加速』という当たり前の物理を、そのまま式にしたものです。

公式 10 · 第7章 流体連成系の解析基礎

非定常空気力とモーメント

非定常空気力とモーメントを説明する図
$L=L_{Ry}y+L_{Iy}\dot y+L_{R\theta}\theta+L_{I\theta}\dot\theta$、$M=M_{Ry}y+M_{Iy}\dot y+M_{R\theta}\theta+M_{I\theta}\dot\theta$

橋桁や翼のような物体が風を受けながら、上下方向 $y$ と回転 $\theta$ の2方向(2自由度)で揺れるとき、流れが物体に及ぼす力 $L$(上下の力)とモーメント $M$(ねじろうとする力)を、変位 $y,\theta$ とその速度 $\dot y,\dot\theta$ に比例する項の足し算で表したものです。添字 $R$ は変位に比例する成分で、ばねのように位置で決まる力として効きます(剛性に加わる)。添字 $I$ は速度に比例する成分で、動きに合わせて働く力として効きます(減衰に加わり、妨げる向きにも手助けする向きにもなりうる)。いちばん大事なのは、$y$ の動きが $\theta$ 向きの力を生み、$\theta$ の動きが $y$ 向きの力を生む『交差項』($L_{R\theta}$ や $M_{Ry}$ など)があることです。この交差項が、上下の揺れと回転の揺れを、空気の力を通してつなげてしまいます。

具体例

ばね自体は上下と回転をばらばらに支えていても、空気力の交差項があると、片方が動くともう片方もつられて動き出します。

公式 11 · 第8章 振動の数値計算技術

直接法:コレスキー分解と前進/後退代入

直接法:コレスキー分解と前進/後退代入を説明する図
$[K]=[L][L]^{\mathsf T}$、$[L]\{x\}=\{f\}$(前進代入)、$[L]^{\mathsf T}\{u\}=\{x\}$(後退代入)

対称でプラスの性質をもつ行列(実対称正定値)$[K]$ の連立一次方程式 $[K]\{u\}=\{f\}$ を直接法で解く手順です。逆行列 $[K]^{-1}$ をまともに作るのは計算が重いので、$[K]$ を下三角行列 $[L]$ とその転置 $[L]^{\mathsf T}$ の積に分けます(コレスキー分解)。すると $[L][L]^{\mathsf T}\{u\}=\{f\}$ となり、途中の $\{x\}\equiv[L]^{\mathsf T}\{u\}$ と置けば、まず $[L]\{x\}=\{f\}$ を上から順に解いて $\{x\}$ を求め(前進代入)、次に $[L]^{\mathsf T}\{u\}=\{x\}$ を下から順に解いて $\{u\}$ を求めます(後退代入)。三角形の行列は、上(下)から一つずつ代入していくだけで解けるので、重い逆行列を作らずに済むのが利点です。

具体例

対称正定値な剛性行列なら、コレスキー分解→前進代入→後退代入の3手順で、逆行列を作らずに変位 $\{u\}$ が求まります。

公式 12 · 第9章 結果の検証と考察

MAC(モード信頼性評価基準)

MAC(モード信頼性評価基準)を説明する図
$\mathrm{MAC}=\dfrac{|\{\phi_i\}^{\mathsf H}\{\phi_j\}|^2}{(\{\phi_i\}^{\mathsf H}\{\phi_i\})(\{\phi_j\}^{\mathsf H}\{\phi_j\})}$

MAC(モード信頼性評価基準、モード相関係数とも呼ぶ)は、実験で測った振動の形(モード)と、FEMで計算した振動の形が『どれだけ似ているか』を0〜1の一つの数字で表すものさしです。2つのモードを向きを持った矢印(ベクトル)と見なし、向きがそろっているほど1に、直角に近いほど0に近づきます。式は $\mathrm{MAC}=\dfrac{|\{\phi_i\}^{\mathsf H}\{\phi_j\}|^2}{(\{\phi_i\}^{\mathsf H}\{\phi_i\})(\{\phi_j\}^{\mathsf H}\{\phi_j\})}$ で、分子は2つの矢印の内積(重なり具合)の絶対値の2乗、分母はそれぞれの長さの2乗の積です。分母はすでに「各長さの2乗の積」です。式にある内積を、さらに2乗しないよう注意します。同じ測定点・方向で比較し、1に近ければ形の相関が高いと判断します。モデル全体の妥当性は固有振動数なども併せて確認します。0に近ければその2つの形の相関が低いことを示します。モードが複素数のこともあるので右肩のHは共役転置を表します(実数モードなら普通の転置Tでよい)。実験とFEMの一致度を数値で突き合わせる、検証の主役の指標です。

具体例

実験 $(0.9,-2.1,1.0)^T$ とFEM $(1,-2,1)^T$ のMACは約0.997で、形がよく一致します。正負を丸ごと反転してもMACは同じです。

本ページはsafaによる独立した解説で、アプリ「CAE試験対策」の用語・公式・図を使用しています。日本機械学会による監修・公認を示すものではありません。