公式 第3章 熱伝導の基礎

伝熱を支配する抵抗:律速の判定

$\Delta T_i=QR_i$

意味・使いどころ

直列の伝熱経路では、各部分に同じ熱流量Qが通ります。各部分の温度降下はQRiなので、抵抗が大きい部分ほど温度差を多く消費します。全体の中で一つの抵抗が他より十分大きい場合、その部分が熱流量を主に制限します。これを律速、または支配抵抗と呼びます。ただし、最も大きい抵抗があるだけで、残りを無視してよいとは限りません。例えば抵抗が三つとも同程度なら、全てを足して計算する必要があります。平板の伝導抵抗はL/(λA)、熱伝達抵抗は1/(hA)なので、λやhの数値だけを並べても、どの部分が支配するかは判断できません。小さなλでも層が極めて薄ければ抵抗は小さく、大きなλでも厚い層や小さな面積なら抵抗が大きくなる場合があります。まず同じ単位の抵抗へ換算し、$R_i/R_{\mathrm{tot}}$ で割合を見ることが重要です。この割合は、その部分が全体の温度差の何割を負担するかにも一致します。ある抵抗を大きく減らせるなら、一般に支配抵抗を改善する方が全体の伝熱量を増やす効果は大きくなります。ただし、実際の設計では変更可能な量や費用も考慮します。最大抵抗以外を合計して小さいと確認できた場合に初めて、$Q\approx\Delta T/R_{\max}$ と近似できます。断熱・保温が目的なら、抵抗を増やして熱流量を減らす方向になります。放熱が目的なら抵抗を減らす方向です。「改善」が常にλやhを大きくすることではなく、目的に合わせて抵抗を変えることだと理解します。

具体例

直列抵抗が0.05、0.10、0.50 K/W、全温度差が65 Kなら、① $R_{\mathrm{tot}}=0.65\,\mathrm{K/W}$、$Q=100\,\mathrm{W}$。②最大抵抗の割合は $0.50/0.65\approx76.9\%$ です。③0.50を0.25へ半減するとQは162.5 Wで、62.5%増加。④0.05を0.025へ半減してもQは104 Wで、4%増加です。最大抵抗だけで近似するとQは130 Wとなり、正解より30%大きいので、残りを無条件に無視できません。

伝熱を支配する抵抗:律速の判定の図解
図:伝熱を支配する抵抗:律速の判定(アプリ収録の図版)

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