公式 第2章 固体力学の基礎

応力集中:穴や切欠きに集まる負担

$\sigma_{\max}=K_t\sigma_n$

意味・使いどころ

穴、切欠き、段付き部分など、形状が変化する箇所では、周囲の平均的な応力より大きな局所応力が生じます。これが応力集中です。荷重を伝える応力の分布が形状の変化によって乱れ、その周囲へ集中するためです。形状の影響をひとまず無視して求めた基準の応力を公称応力σnと呼び、局所的な最大応力が何倍になるかを表す数字が応力集中係数Ktです。カードの式は、公称応力に係数を掛けて最大応力を求めます。ただし、公称応力の計算に使う断面をそろえることが非常に重要です。穴を差し引かない全面積で求める図表も、穴を除いた残りの面積で求める図表もあります。どちらの図表のKtを使うかで、公称応力の定義も変わります。残りの面積で求めた係数に、全面積の公称応力を掛けるなどの混用をすると、最大応力を間違えます。Ktは主に形状や荷重状態で決まる弾性範囲の係数です。材料の降伏強さそのものではありません。切欠きの先が丸いほど集中が弱くなる傾向があり、鋭いほど大きくなります。有限要素解析では、この付近の要素を細かくして応力が安定するか確認します。ただし完全に尖った角などでは、要素を細かくしても理想化モデルの最大値が増え続ける場合があり、単に最大の色の値だけを読むのは適切ではありません。局所降伏した後の応力や、疲労への影響を表す係数も、弾性応力集中係数と同一とは限りません。

具体例

幅100 mm、板厚2 mm、穴の直径20 mmの板を10000 Nで引っ張ります。①全面積は200 mm²、公称応力は50 MPa。②穴を除いた断面積は160 mm²、公称応力は62.5 MPa。③全面積基準のKtが3なら、最大応力は150 MPa。同じ最大値を残りの面積基準で表すKtは $150/62.5=2.4$ です。「Kt=3」と「62.5 MPa」を混ぜて187.5 MPaとするのは誤りです。このKt=3は計算用の仮定で、この板の実際の値を指定するものではありません。

応力集中:穴や切欠きに集まる負担の図解
図:応力集中:穴や切欠きに集まる負担(アプリ収録の図版)

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